女の子になりたい。

2013.06.13 Thursday

塾の帰り道だろうか。

小さな身体に似合わない 大きな鞄を背負って,
子どもたちが夜道を歩いていく。

街灯に照らされた無邪気な笑顔が目に映る。


私は哀しくなる。

もう自分はあの頃には戻れないんだと思うと,
どうしようもなく,虚ろな気持ちが私を包み込む。

私はあの歳の頃,何を想って生きていたんだろうか。
今はもう,思い出せない。

 *    *    *

私の憧れは,小さい頃から, 『小公女』 のセーラだった。
今でも,ずっと。

いつだって気品と優しさと想像力を忘れない,
セーラみたいな女の子になりたかった。


でも,今の私は,
とっくにセーラの年齢なんて追い越してしまった。

私は一体,何を目標に生きればいいんだろう。


女の子から女性へ,変わらなければならない時なのに,
私の憧れは,いつまで経っても女の子なんだ。

 *    *    *

ラムネ瓶の中の,きらきらしたビー玉が欲しくって,
それだけのことに夢中になれた頃。

お風呂に浸かって水面を見ると,ゆらゆら伸びた,自分の手足。
魔法みたいに見えた頃。


使える言葉も,使えるお金も,行ける場所だって,たくさん,たくさん。
子どもの頃よりずうっとたくさん,あるはずなのに。


あの頃は無限に広がって見えた世界が, 今ではとっても, 狭くて苦しい。

ラベンダーのソフトクリーム。

2013.02.27 Wednesday

ふわり。
口いっぱいに広がる,薄むらさきの香り。
ラベンダーのソフトクリーム。

それは多分, 私の中の,とても幸福な記憶です。

家族三人で, 北海道へ行ったことがあるんです。
空港から レンタカーを借りて

あれは一体, いつのことだったんだろう。


私はいつでも過去のことばかり考えているのに, どうしてか,
楽しかった想い出を連れてくるのは苦手のようです。

ラベンダーのソフトクリーム。

何をしたのか,何処へ行ったのか,いつの記憶なのか,隣には誰が居たのか,
なんにも思い出せない。


ただただ,ラベンダーのソフトクリーム。

今にも溶けて失くなってしまいそうな,淡い記憶。

灯りのない部屋で。

2012.07.17 Tuesday

蛍光灯。
わたしは,蛍光灯が嫌いでした。

昼でも夜でもお構いなしに,部屋の中をパキッと均一な明るさに保つ,
無味乾燥な,正しい白。

正しい白の真下に居ると,あなたもきちんとしなさいと,無言の圧力をかけられているようで,息がつけずに,身体の内側が疲れていくようだと,子どもの頃のわたしは思っていました。


「白熱灯はぼんやりして,眠くなりそうでだめ。」

母は,わたしと反対でした。

「蛍光灯のほうがシャキッとしてやる気が出るでしょ。」

白熱灯のぼんやりした橙色が好きなわたしと,
蛍光灯のきちんとした白が好きな母は,反対でした。


おまけに世の中みーんな母の味方のようで,
家も,塾も,学校も,どこでもここでも正しい白。

なるほど求められているのは,冷たくて,きちんとした,正しいもののようでした。


*    *    *


…ホントのところは,
蛍光灯のほうが白熱灯よりもずっと電気代が安くて経済的だったんだ,なんて。

この上なく合理的で,実利的で,
ちっともロマンチックじゃない理由を知ったのは,
それからずいぶんあとのこと, おとなになってからでした。

自分を創ること。

2011.02.11 Friday

1ヶ月ぶり… ううん,もっとかな。
日記を書くのは,とっても久しぶりです。

だから, なんだかちょっぴり 緊張(*・.・)(・.・*)


いろんなことがあって, 幸せだったり不安だったり,
まるで頭の中に嵐がきたみたいだったので,

少しだけでも日記に書きつけることで,頭と心を整理せいとん。
…できたらいいな。


 *     *


そういえば, 今年はいきなり
クリスマスの記事から時間があいて,きのこちゃんと遊んだ記事で.笑

去年の振り返りも, 新年のごあいさつらしきことも,
まったく書いてなかった気がする(*・□・)


日記を書きたい気持ちはあるのに,何を書いていいかわからなくて。


 *     *


私にとっては, 日記を書くことは,自己表現の一環でした。


ただの小娘のブログだろう,
そんな大仰なことかって思われそうだけれど。



私は, 慣れない人となんでもないお喋りをしたり,
口で何かを伝えるのが苦手だったから,

日記には嘘偽りなく 自分の気持ちや周りの出来事を書いて,
「ああ,この人はこういう子なんだ」 って,読んだ人に分かってもらいたかった。
自分のことを見てほしかった。


学校も休みがちだったし 地味で目立たない自分だけど,
ここで生きてるんだよ こんなこと考えてるんだよって。



だから, 日記を何日も書いてないと
自分の存在が忘れ去られちゃう気がして怯えてた。




でもね, たぶん。


私が日記を書けなかったのは,
ひどく幸せだったせいかもしれない, って思ったんだ,最近。



悲しいことがほとんどなかったの, この一ヶ月。


 *     *


私の日記の,特に 「ひとりごと」 のカテゴリは,
ネガティブな内容が大半を占めてる。

きっと はんぶん無意識に, はんぶん意図的に。



自分らしくありたいのに,
私にしか無いものが欲しいのに,

その “自分” ってどんな人間なのかすらわからない,
何のために存在してるのか分からないような不安が,
私の中にはいつもあって。



例えば

高校生である私,
絵を描く私,
Coccoが大好きな私,
ロリィタファッションを身に纏う私。


それらはぜんぶ私を構成する要素ではあるけれど,
他の誰か, それも大勢の人に当てはまるであろう要素。


私らしさを強調すればするほど,
他の誰かの影を借りながら歩いているような気がして。

その他大勢の中に 埋もれていくような気がして。



だから
そんなどこにでもいそうな平凡な私には価値がないのかも,

でも それでも私のこと見てほしい, 見捨てないでほしいって。


それで必死に編み出した手段が,
傷ついた自己のイメージを固めることだったんだと思う。



本当は,
ふわふわで明るくて優しくて 素直で 表情がくるくる変わるような
みんなに愛されるような女の子になりたいけれど,

そうはなれそうもないから,
夕日の色にも傷ついちゃうようなネガティブな自分でもいいや。

だってそれが私なんだもん, そう思って。



自分の中の,暗い側面ばかり押し出してた。

いつも海の底にいるみたいだった。


自分が感じた苦しみや悲しみ,
自分の醜いところ。

そういう部分は,
忘れたり 目を背けたりしないで
じっくり味わうべきものだと思ってた。


それを絵や文章で外に表したいとも思った。


人をはっとさせられるくらいの世界観が作れたら
誰かが私を見てくれるんじゃないかなって。




だけどね, 今の私の周りに起こるのは,
楽しいことや嬉しいことばっかり。

私には幸せは似合わないと思っていたのに,だよ。


だからちょっと戸惑っているのかな。


幸せであることに戸惑う, って
すこし不思議な感じもするけれど。




でも, もうやめたいなって思った。

自分を不幸な人に仕立て上げて,周りに心配ばかり掛けるのは。





別に 平凡すぎる私でも, 何もできない私でも,
ここに居ても いいよね。




陽の当たる場所に居ても いいよね。