2013.06.22 Saturday
近頃の私は, 不安でたまらないのです。
何も見えない未来が, 不安で,
何も出来ない自分が, もうしわけなくて,
毎日やってくる灰色の朝から, 逃げてしまいたくて,
ひとりで柔らかい羽根布団にもぐりこんでみても,
不安は募るばかりで。
鉛みたいに重たい身体。
私は何がしたかったんだっけ?
ふと 辺りを見渡すと,
人生を満喫しているように見える 同窓の人たち。
自分の送れなかった人生, 自分の選ばなかった人生,
いまの私にはどれもこれもが羨ましくて,眩しくて。
過去をふり返れば,惨めな私。
青い空が恨めしい。
卒業式。
はしゃいでいるクラスメイトを尻目に,
ひとり, 逃げるように入った女子トイレの個室。
深呼吸。
ねえ, 誰か他の人と,人生とりかえっこしたいよ。
お願い。 手をひいて。
どこか 明るい陽の差す場所へ, 連れていってほしい。
私の名前を, 呼んでほしい。
2013.06.13 Thursday
塾の帰り道だろうか。
小さな身体に似合わない 大きな鞄を背負って,
子どもたちが夜道を歩いていく。
街灯に照らされた無邪気な笑顔が目に映る。
私は哀しくなる。
もう自分はあの頃には戻れないんだと思うと,
どうしようもなく,虚ろな気持ちが私を包み込む。
私はあの歳の頃,何を想って生きていたんだろうか。
今はもう,思い出せない。
* * *
私の憧れは,小さい頃から, 『小公女』 のセーラだった。
今でも,ずっと。
いつだって気品と優しさと想像力を忘れない,
セーラみたいな女の子になりたかった。
でも,今の私は,
とっくにセーラの年齢なんて追い越してしまった。
私は一体,何を目標に生きればいいんだろう。
女の子から女性へ,変わらなければならない時なのに,
私の憧れは,いつまで経っても女の子なんだ。
* * *
ラムネ瓶の中の,きらきらしたビー玉が欲しくって,
それだけのことに夢中になれた頃。
お風呂に浸かって水面を見ると,ゆらゆら伸びた,自分の手足。
魔法みたいに見えた頃。
使える言葉も,使えるお金も,行ける場所だって,たくさん,たくさん。
子どもの頃よりずうっとたくさん,あるはずなのに。
あの頃は無限に広がって見えた世界が, 今ではとっても, 狭くて苦しい。
2013.02.27 Wednesday
ふわり。
口いっぱいに広がる,薄むらさきの香り。
ラベンダーのソフトクリーム。
それは多分, 私の中の,とても幸福な記憶です。
家族三人で, 北海道へ行ったことがあるんです。
空港から レンタカーを借りて。
あれは一体, いつのことだったんだろう。
私はいつでも過去のことばかり考えているのに, どうしてか,
楽しかった想い出を連れてくるのは苦手のようです。
ラベンダーのソフトクリーム。
何をしたのか,何処へ行ったのか,いつの記憶なのか,隣には誰が居たのか,
なんにも思い出せない。
ただただ,ラベンダーのソフトクリーム。
今にも溶けて失くなってしまいそうな,淡い記憶。
2012.07.17 Tuesday
蛍光灯。
わたしは,蛍光灯が嫌いでした。
昼でも夜でもお構いなしに,部屋の中をパキッと均一な明るさに保つ,
無味乾燥な,正しい白。
正しい白の真下に居ると,あなたもきちんとしなさいと,無言の圧力をかけられているようで,息がつけずに,身体の内側が疲れていくようだと,子どもの頃のわたしは思っていました。
「白熱灯はぼんやりして,眠くなりそうでだめ。」
母は,わたしと反対でした。
「蛍光灯のほうがシャキッとしてやる気が出るでしょ。」
白熱灯のぼんやりした橙色が好きなわたしと,
蛍光灯のきちんとした白が好きな母は,反対でした。
おまけに世の中みーんな母の味方のようで,
家も,塾も,学校も,どこでもここでも正しい白。
なるほど求められているのは,冷たくて,きちんとした,正しいもののようでした。
* * *
…ホントのところは,
蛍光灯のほうが白熱灯よりもずっと電気代が安くて経済的だったんだ,なんて。
この上なく合理的で,実利的で,
ちっともロマンチックじゃない理由を知ったのは,
それからずいぶんあとのこと, おとなになってからでした。